「オタクに優しいギャル」は「オタサーの姫」が生んだ?キャラクター化を推し進めた2014年という特異点

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人力検索はてなの質問を見てて、そういえばそんな話が数年前あったなと思い出しました。

黒髪ロングはビッチで、ギャルこそが純朴という価値観がオタクに… - 人力検索はてな
黒髪ロングはビッチで、ギャルこそが純朴と...

黒髪ロングはビッチで、ギャルこそが純朴という価値観がオタクに芽生え、両者の価値が逆転したという趣旨のことを書いたブログ記事を探しています。

読んだのは3~5年前。特定の作品を対象にした話ではなかったとのことで、自分のほうでも探してみましたがそれらしいのを見つけることはできませんでした。

ただ、今回いろいろ振り返ってみて「ギャルはオタクに優しい。逆に黒髪ロングは我が強いビッチ」論の広まりは、2014年ごろから観測できることが分かりました。

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はてなブックマークで2016年12月31日以前を調べる

「読みやすいユーモアのある文章で、たぶん、名のあるブログだと思います」とのことだったので、はてなブックマークで誰か保存してるんじゃないかと思い、それらしいキーワードで期間指定して本文検索しました。

しかし、出てきたブログに片っ端から目を通しましたが見つけられず、ブクマカ使えねえなと吐き捨てながらGoogleで調べることに。

どうして最初からGoogleで検索しなかったかと言うと、この手のワードだと間違いなく「オタクな僕がクラスのギャルとセクロス」系の記事で検索結果があふれるの目に見えてたからで、実際に検索すると案の定な結果でした。

期間指定を使ったり、検索ワードを変えたり、これはないなと思うワードを除外したりしながら試してみましたが、やはりそれらしいブログは見つけられず。

正直な話をすると、この時点で素面じゃやってられなくなってビール飲み始めました。

2014年に広まった「ギャルはオタクに優しい」という概念

件のブログを探すのはあきらめたあと、興味の対象が「ギャルはオタクに優しい。逆に黒髪ロングは地雷」なる概念が、いったいどの時点で広まったのかに移ります。

ギャルがオタクに優しい、オタクとギャルという正反対に見える組み合わせが実は親和性高いとする概念は、それ自体は目新しいものでなく「気弱で平凡な少年とヤンキー少女」の変奏かと思われます。

それでいて2010年代前半には、あまり語られることがありませんでした。

なぜ女は黒髪をすぐに染めるのか : ガラパゴス速報 跡地
1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/12(月) 18:44:17.49 ID:ne9+YMmf0黒髪のままでいてくれよ;; 2:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/12(月) 18:44:48.81 ID:f0r3+bz00なぜだろうな 7:以下、名
結局、お前らが地味な女の子を好む理由は「俺でも攻略できそう」だからだろ?最低だな : 暇人\(^o^)/速報
4: ミラ(大阪府):2012/05/13(日) 19:59:52.63 ID:aEr01ke/0おまえなんも解ってないな 6: 金星(catv?):2012/05/13(日) 20:02:49.42 ID:X9TXEP7o0と思うのは童貞の証拠。どんだけ身持ちが硬いかを知ることになる。 15: 土星(神奈川県):20...
お前らと気が合うのは 「黒髪ロング清楚」 ではなく 「ギャル」 : ニュー速VIPブログ(`・ω・´)
1 :名無しさん@涙目です。(兵庫県):2011/08/05(金) 10:42:39.15 ID:wGYO0Gze0 ?PLT(20002) ポイント特典タレントのモト冬樹(60)が4日、都内で行われた米映画「ドライブ・アングリー3D」公開記念“飛び出すDカップ限定3D試写会”に登場した。米俳優のニコラス・ケイジ

※※※追記 2018/10/15 18時50分※※※

「オタクに優しいギャル」は「オタサーの姫」が生んだ?キャラクター化を推し進めた2014年という特異点 – 十中(もぎきあたる)って読みます

ヤンキー文化まで遡ればきまぐれオレンジロードとかもそういう方向性ではあるのかしら

2018/10/15 18:10

『きまぐれオレンジロード』の鮎川まどかとか、『ANGEL』の姫乃樹静香は最初に思い浮かんだんですが、彼女らは不良設定されてるけど外見上の特徴は「黒髪ロングの美少女」で、いかにも伝統的なヒロインのスタイルを踏襲しているところがあったので例示はしませんでした。

※※※追記終わり※※※

はてなブックマーク検索にしてもGoogleにしても、期間を細かく指定しながら何度もチェックすると、ある時点で特異点が生じていることが見えてきます。それが2014年です。

このあたりから「ギャルはオタクに優しい」「実はオタクとギャルの相性がいい」「周りが髪を染める風潮あるなかで黒髪ロングって、逆に我が強くて性格キツそう」などの書き込みが爆発的に増えます。

キモオタ「ギャルはオタクに優しいし、話も合う」 | ログ速
蓮実クレア がオタク向けAV女優だと知った衝撃
蓮実クレアって名前だけは聞いたことあったんだよ。ただ、ギャル系じゃん。ギャル系って、いやほらね。な~んか、ワンパターンっていうか。そ…

機を見るに敏なヨッピーも2014年夏に『黒ギャルとオタクが宅飲みしたら意外と相性が良かったことが判明』という記事を投稿しています。

黒ギャルとオタクが宅飲みしたら意外と相性が良かったことが判明 | CHINTAI情報局
こんにちは。ヨッピーです。

「ギャルはあまり偏見とか持たないから、実はオタクにも優しいのでは?」という意見があるんですが、「ギャル」と「オタク」という、いわば対極の存在が実際の世界で交わることは少ないので、真相は謎のままです。

では、そのギャルとオタクが実際に宅飲みをしたらどうなるのでしょうか。
本日は僕の友人に協力してもらって、世紀の大実験をお届けしたいと思います!

嫌悪感を表に出さない=偏見を持ってないに結びつけるあたり、そこはかとなく社会性と対人経験値の低さを感じてしまいますが、一応このあたりから「ギャルはオタクにも分け隔てなく接してくれる」概念が広まったようです。

同時期に爆誕したオタサーの姫

個々のキャラクターに目を向けるなら、ギャル風だが純情という性格付けは城ヶ崎美嘉由比ヶ浜結衣が2011年に誕生してますし、それなりに人気も集めています。2014年から急に生み出されたわけではありません。

それでは2014年に何がオタクの意識を変えたのか。ここで注目したのがギャルの対照にされている黒髪ロング清楚系。ギャルの評価が上がると反対に「実はビッチ」と言われ始めた人たちです。

2014年のインターネットを振り返っていくと、「ギャルはオタクにも優しい」論が盛り上がる前夜、ある言葉がTwitterを中心にバズっています。それがオタサーの姫です。

オタサーの姫(ヲタサーの姫)とは、男性の割合が多い文化系サークル(オタクが集まるようなサークル)に存在する数少ない女性メンバーのことである。男女比が偏っているおまけに男性メンバーは女性への免疫がないため、美女でなくともモテない男性メンバーから「お姫様扱い」されるためそう呼ばれる。
オタサーの姫とは – はてなキーワード

 

見た目の基本はアニメキャラのコスプレ、ロリィタファッション、黒髪ロングやツインテール、ニーソなどのオタク受けする格好。
ファッションが垢抜けていない方が反って童貞を殺す服として十分な効果を発揮する場合も多い。
オタサーの姫 (おたさーのひめ)とは【ピクシブ百科事典】

Google トレンドでオタサーの姫を調べると、初めて登場したのが2013年11月でした。その後しばらく検索ボリュームは地をはい続けますが、2014年2月ごろからバズり始めます。

2014年6月には、2ちゃんねるに「入ったサークルの「オタサーの姫」がウザかったからギャル投入した」というスレが建てられ、オタサーの姫と対立するものとしてギャルが扱われています。

入ったサークルの「オタサーの姫」がウザかったからギャル投入した : ゴールデンタイムズ
1 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします :2014/06/28(土) 03:56:07.50 ID:5DufPEtQ0.net 友人の彼女(ケバギャル)に頼んで、体験入部してもらった 1週間で姫がブッ壊れた 2 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします :2014/06/28(土) 03:57:55.4...

※※※追記 2018/10/16 3時20分

「オタクに優しいギャル」は「オタサーの姫」が生んだ?キャラクター化を推し進めた2014年という特異点 – 十中(もぎきあたる)って読みます

「黒髪ロングはメンヘラ」はもうちょっと昔からあった気がするがビッチってなると確かに「オタサーの姫」概念が出来てからかも。/「サークラ」はもっと前からあるっぽい?

2018/10/16 00:56

「現実の黒髪ロングは大概メンヘラビッチぞ」みたいなことはもっと前から言われてましたね。キャラクターとして見たとき「オタサーの姫」が優れていたのは、そうした個々人の経験やイメージに分かりやすい名前とデザインを与えたことかなと思います。

主に蔑称や揶揄含みで。

そのふたつが揃ったキャラクターはパワーを持ち始めます。古くから存在は確認されてるし、みんな何となく分かってるけど、これだって呼び名が定まってないところにキャッチーなネーミングされると、そこに人が流れていってブームが始まることってあるじゃないですか。

存在が発生した時期と、それが名前を得てパワー持ったタイミングは必ずしも一致ません。分かりやすい名前と明確なデザインを与えられたときに、キャラクターは現実を侵食してきます。

言葉や概念としては「サークルクラッシャー(サークラ)」のほうが古いですね。サークラの定義を「圧倒的な男所帯に少数の女が入ってきて内部崩壊した」と置いた場合、おそらく事例は1000年単位で遡れます。サークラという呼び名だけでも十分に古いですが。

サークラよりもオタサーの姫は言葉の射程範囲が狭いです。オタクサークルに限定してるので。その分だけイメージが掴みやすく強固です。

基になるキャラクターのイメージがはっきりしていて強いと、テーゼとアンチテーゼで対になるキャラクターも作りやすいです。オリジナルの要素を反転させていけばいいんですから。

※※※追記終わり※※※

夏コミ時期の8月にピークを迎えて検索数は減少。失速したかに見えたオタサーの姫ですが、2015年5月末から再び盛り返します。

オタサーの姫 グーグルトレンド

この時期になにがあったかというと、オタサーの姫を育てるスマホゲームが登場したんですね。

押切蓮介先生なにやってるんですか! 育成アプリ「オタサーの姫〜僕らの姫はデリケート〜」が登場
押切さんがキャラクターデザインを務めています。

この少し前にはオタサーの姫を扱った書籍『オタサーの姫 ~オタク過密時代の植生学~』も登場しています。

ネットでのバズりにメディアが1年遅れで追いつき、第2次ブームを呼んだ格好です。

こうした流れのなかでオタク受けする容姿=実は腹黒いキャラクターという概念が醸成されていったのではないでしょうか。それに対を成すキャラクターとして見た目は派手なギャルだけど中身は僕らが求める純粋な少女の像が完成されていったのかもしれません。

この時期の作品では2014年6月に『おしえて! ギャル子ちゃん』が連載スタート。

『はじめてのギャル』が2016年1月から「月刊少年エース」に掲載されています。

上記2作はアニメ化もされました。

ライトノベルでは2014年夏に『僕の文芸部にビッチがいるなんてありえない。』が出ています。

もう少しだけ続きます。

ヲタ婚

2014年はギャル絶滅が危惧された年

2014年にオタク界隈で評価が上がったギャル。それではインターネットやオタクコンテンツを離れた、現実のギャル文化はどうだったのかと見てみると、この時期はギャル雑誌が次々に休刊してギャル文化の退潮が嘆かれた時代でもあります。

ギャルはこのまま終わるのか?――相次ぐギャル雑誌の休刊とギャルの激減(松谷創一郎) - Yahoo!ニュース
『egg』などギャル雑誌が次々と休刊し、ストリートからはギャルの姿が激減した。ファストファッションの浸透、スマホの普及などはギャル文化にどう影響を与えたのか? そして、果たしてギャルは再興するのか?

もちろん雑誌が売れないこととギャル文化の衰退を直接結びつけることはできません。雑誌が売れないのはギャル系に限ったことではなく、出版界全体の問題ですから。

私も出版社の方と話をしたとき「近ごろは雑誌が本当に売れない。会社説明会で『これは決まって読んでるという雑誌がある人』と質問しても手が上がらない。出版業界を志してる人でそれだからね」と言われたことがあります。

そうしたことを踏まえた上でも、リンク先ではギャルの衰退が起きているとされ、その理由が経済的な問題と文化的な問題から考察されています。

一つ目は経済要因です。若い人たちの可処分所得の使途が、通信費用などにかなり比重を移していることが考えられます。たとえばギャルの特徴である茶髪や金髪にするためには、美容室で2~3ヶ月に一回ヘアカラーをしなければなりません。すると、年間で2~3万円を使うことになります。また、ファストファッションの浸透により、洋服にそれほどお金をかけない生活も浸透しました。ユニクロだけでなく、06年・GU、08年・H&M、09年・フォーエバー21とさまざまなファストファッションのブランドが定着しました。東京で言えば、新宿三丁目は伊勢丹の周囲にファストファッション店が軒を連ねている状況です。

ただ、そうしたことよりもやはり大きいのは文化的な要因です。ギャルのような派手な外見をすることが、若い人たちにはリスクだと捉えられているからです。

これは、やはり若者たちのコミュニケーションがさらに複雑化・繊細化した結果だと考えられます。「若者たちのコミュニケーションは希薄化している」などとしばしば言われますが、さまざまな調査を見てもそうした結果は見受けられないどころか、その逆の傾向をうかがわせています。もちろんこれはケータイの影響です。コミュニケーションの総量は携帯電話を持つことで格段に増え、さらにTwitter、Facebook、LINEとツールも増えてきました。

そうした環境ではさまざまな炎上リスクが顕在化しました。数年前に相次いだバカッター問題(飲酒運転などの犯罪告白ツイート)などは極端な例ですが、目立つことがすなわち社会的なリスクだと感受されている傾向があります。それは、従来の同調圧力とは少々ニュアンスが異なります。「みんなと同じようにしなければならない」というのが同調圧力ですが、そうではなく「目立たないようにしなければいけない」というものです。「スクールカースト」という言葉が広がったのも2000年代後半からですが、ヒエラルキーのトップに立つことはそこから引きずり降ろされるリスクを常に持つようなものだと認識されているわけです。派手なギャルスタイルは、外見そのものがリスクだと認識されているのです。

さらに筆者はケータイ小説ブームや、雑誌上で行われた病み語りがギャルに痛いイメージをつけ、それによってギャル同士の連帯は強まったものの外部の人間を引かせてしまったと説いています。

そして、面白いことにAKBなどのアイドル文化によって、社会的にはオタクが痛くないものとして扱われ、ギャルが痛い存在として広く扱われるようになったと論じます。

これらと同時に生じていたのは、AKB48を中心とするアイドルブームとオタク文化のさらなる浸透です。AKB48はさまざまなタイプがいましたが、篠田麻里子や板野友美が卒業し、最近は目立ったギャル系のメンバーは存在しません。今年の総選挙でトップに立ったのがオタク(腐女子)としても知られる黒髪の渡辺麻友であったように、オタク文化はさらに人口に膾炙する状況を見せています。アイドルもオタク文化におけるセクシュアリティもそもそもは保守的なものですが、それが強く支持を集めているのが現状です。

ギャルは痛くてオタクは痛くない――そうした認識は広く共有されつつあります。20年前に考えられなかったことです。

社会がギャル離れを起こした時期に、むしろオタクはギャルを自己に都合の良いキャラクター化して礼賛し、他方では、かつて痛い存在とされていたオタク的なアイコンが社会に受け入れられる逆転。この裏返り方は面白いなと感じました。

そういえばオタクコンテンツに出てくるキャラクター化されたギャルが、高確率で腕につけてるカラフルな輪っかは何なんでしょう?

『明樹水底 on Twitter: "オタクがギャルをひとつの属性として考え、萌えを求めて作ったキャラクター、その多くが"ギャルらしさ"として腕にカラフルな輪っかを何個もつけている"』へのコメント
この記事に対して1件のブックマークがあります。

まとめ

そんなこんなでやってきましたが、ここいらで締めくくりましょう。

件のブログ記事は見つけられませんでした。誰かWEBリサーチ能力高い人が引き継いで、見つけたら教えてくれると嬉しいです。

「ギャルはオタクに偏見を持たず、別け隔てなく接してくれて優しい」というキャラクター類型は、どうやら2014年ごろから本格化したようです。その背景には『オタサーの姫』という言葉が誕生したことによる、いかにもオタク受けしそうな容姿や振る舞いに対するイメージの変容があると言えるかもしれません。

オタク界隈でギャルの評価が上がる一方で、村の外ではギャル文化の衰退が嘆かれ、むしろオタク的なアイコンが幅を利かせ始めていました。

ギャル文化が退潮したからこそ薄らぼんやりしたイメージを集めて、キャラクター化しやすかったと言える可能性もあります。

オタクだけどギャルとはうまく話せる系の体験談は多くが、相手の対人能力が高く話を合わせてくれるからで、イキリ大学生の「俺、同年代とは話が合わなくて、むしろ年上の人と話しやすいんだよね」に近いものを感じます。

現場からは以上です。

コメント

  1. 失礼します

    社会学者の宮台真司先生は実際のフィールドワークの結果として【「ケバくて煙草吸ってる女はピュアだが、スッピン風女は…」(なんじゃこれは) http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20151117/p2 と結論しました(2015)