仏の加護を持つ武僧イー・ロンとは?ブアカーオ戦で見せた神通力

少林寺 雑感

中国武術は多くのフィクションで取り上げられ、格闘ゲームでは必ずと言っていいほど何らかの流派を名乗るキャラクターが登場する。多彩な技と長い歴史が生んだ数々の伝説や達人の存在が魅力的で使いやすいためだろう。

『Fate/Grand Order』でも神槍と歌われた八極拳師・李書文が登場する。

李書文FGO

そんな中国武術であるが、果たして現実の世界ではどうかというと、これがなかなか難しい扱いになる。たまに中国拳法の使い手と名乗る格闘家がプロのリングに上がるが、あまり芳しい成績は残せていない。

中国武術が他国の格闘技に後れを取った理由は何だろうか。

スポンサーリンク
スポンサーリンク

毛沢東時代のスポーツ化で失われた武術の本質

中国武術の不幸は毛沢東に目を着けられたことだった。当時の武術は戦場での殺傷を目的としたものだったため、政府の目が届かないところでそれらを収めた、徒手格闘能力がある人間が量産されるのは好ましくなかった。伝統文化を悪として否定する方針にもそぐわない。

天安門廣場
天安門廣場 / frontriver

毛沢東は1950年代に中国武術のスポーツ化を強力に推し進める。この時代に武術は国民体育と位置づけられ、健康増進や表演目的でのみ教えることを許されるものになった。

現在では健康体操として広まっている太極拳も、元々の教えにあった武術的要素や殺傷目的の技能を取り除き、1950年代に新しく作られたスポーツだ。

中国では対戦相手に直接打撃を加える『散打』も約30年間禁止されていた。散打が解禁されたのは1980年代も半ば。1981年の中央委員会全体会議で公式に文化大革命は間違っていたと採択されるまで、約30年間も中国武術は実践的な競技会の場を奪われた。

そのことが格闘技の世界において中国を時代から取り残すことになる。

文革の失敗を認めた中国は武術を復興させようとするが…

「伝統文化は悪」をスローガンに掲げ、中国武術その他を否定した文化大革命の過ちを認めた中国は、一転して武術を自分たちの代表的な文化と称揚し始める。

文革で破壊され、失われた武術の復興を目指す過程では、アジア競技大会での正式種目入りなど他国へのアピールと並行して武術を本来の形に戻す試みも行われた。

文革でスポーツ化した武術を毛沢東以前に戻そうとする動きだが、空白の30年の間に達人たちは鬼籍に入り、表演武術以外を伝えることが許されないまま役目を終えたのである。

お坊さんファイター対ブアカーオ

自分たちのルーツでもある中国武術の威信を取り戻そうと躍起になるなか、中国のキックボクシング団体『武林風』がある選手を2009年にデビューさせた。

それが少林寺の坊主で少林拳の達人という触れ込みの一龍(イー・ロン)だ。

はっきり言って実力は武林風でも中堅クラスで、技術的にどこが優れてるかと聞かれると非常に答えづらいのだが、取りあえず打たれ強さはなかなか。

御仏の加護を授かったイー・ロンは、倒されさえしなければ劣勢に見えても謎の神通力で勝ちを拾ってしまうため、タフネスが最大の武器と言えよう。その運EXなミラクル勝利ゆえに、一部では仏の化身とも呼ばれている。

不可解な判定のひとつがブアカーオ・バンチャメークとの2試合だ。このブアカーオは2000年代にブアカーオ・ポー・プラムックと名乗りK-1MAXで魔裟斗らと戦っていた、あのブアカーオと同一人物である。

ポー・プラムックは当時所属していたジムの名前。ムエタイでは所属ジムの名前をリングネームにするのはよくある。現在のブアカーオはバンコクに自らのジム、バンチャメークジムを開設したため、名前も本名のバンチャメークに戻している。

ブアカーオとイー・ロンは2015年6月と2016年11月に戦っている。タイの人気者と中国のイロモn……人気者との試合は「世紀の対決」と銘打たれ、大々的に放送された。

ブアカーオ戦で見せたイー・ロンの神通力

第1戦はブアカーオが判定で勝利。第3ラウンドに出会い頭のバックエルボーをもらってグラついたが、それ以外は決定打を許さず当然の勝利だった。

物議をかもしたのは2戦目。パンチを振りながら前に出てくるイー・ロンのファイトスタイルを見切ったブアカーオは、前回以上に何もさせず完封してしまう。

《武林风》宿命之战再起!一龙复仇播求 |20161105期精彩花絮 【河南卫视官方高清】

間違いなく今回もブアカーオだろと思って見ていると、なんと大差の判定でイー・ロンが勝利。試合のどこに24-30も差がつく場面あっただろうか。ない!

またも謎の神通力が働いたイー・ロンの勝利に多くの格闘技ファンは困惑。ホームタウンデシジョンにしても、あからさまにすぎるとの声があがった。

イー・ロンと2度対戦(1度め勝利、2度め引き分け)した長島☆自演乙☆雄一郎は、ブアカーオとの第2戦後にTwitterで「けどこれが中国。なんも知らん奴なら、アウェイやねんから倒さないと負けるよって言葉にまとめられるな」と結果についてコメントした。

最近はタイ人相手に連敗中のイー・ロン

そんなイー・ロンの神通力も最近は効力切れか、2試合続けて敗れている。

まずは2017年11月に行われたシッティチャイ・シッソンピーノンとの試合。現在この階級では世界最強候補の呼び声もあるシッティチャイ相手では分が悪く、第1ラウンドから主導権を握られ第2ラウンド1分10秒に左ハイキックでKO負け。

[HD]《武林风》武僧一龙惨遭西提猜TKO | 20171104期[河南卫视官方超清]

再起を懸けて臨んだ2018年6月のサイヨーク・プンパンモアン戦では、第1ラウンド2分30秒でKO負け。左ハイキックをもらって意識朦朧としたところに追撃の右フックももらって立ち上がれず。

[HD]《武林风》惨遭KO!!一龙在杀玉狼手下竟撑不过一回合!? | 20180602期[河南卫视官方超清]

KOされてしまっては仏の化身でも神通力が発揮できない。

タイ人相手に連敗したイー・ロンだが、果たして再び中国武術の威光を取り戻すことはできるだろうか。

コメント