ジョコビッチが得た新たな強さ、怪我からの復帰が与えた成長

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今年の全米オープンテニス男子シングルスは、第6シードのノバク・ジョコビッチが第3シードのフアン・マルティン・デル・ポトロをストレートで破り、3年ぶり3度目の優勝を飾った。

ジョコビッチはグランドスラム優勝回数を14に伸ばし、男子歴代3位のピート・サンプラスに並んだ。ウィンブルドンに続く今年2個目のグランドスラムタイトルを獲得したジョコビッチだが、2018年1月に受けた右ヒジの手術から復活するまでには苦悩もあった。

試合後のインタビューでケガを乗り越えて獲得した強さ、気づいた人生で大事なことを語っている。

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圧倒的な強さを誇った2010年代

2000年代の男子テニス界がロジャー・フェデラーとラファエル・ナダルの2強だったところに、2010年代に入ってから割って入り、圧倒的な強さを誇ったのがジョコビッチだった。

2011年には全豪オープン、ウィンブルドン、全米オープンを制して4大大会中3大会で優勝するパフォーマンスを見せ、キャリア初の世界ランク1位も獲得した。ここからしばらく4大大会とそれに次ぐ格付けのマスターズ1000大会でジョコビッチの天下が続く。

この時期はフェデラーが打倒ジョコビッチを目指してグランドスラム決勝に勝ち上がっても、そこにジョコビッチが待っていて憎たらしいほどの強さで返り討ちにする光景が繰り返された。

2015年の全米オープン決勝では、大会を通じて好調を維持し、相手のセカンドサーブでコートの深くまで入る新戦術を用意してきたフェデラー相手に、1セット落としただけで危なげなく勝ってみせる。

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フェデラーファンは「これでも勝てなかったら、どうすれば勝てるんだよ」と絶望したものだった。

ケガからの復帰に苦しんだ2018年

2016年には唯一勝っていなかった全仏オープンを制し、四大大会すべての優勝トロフィーを手に入れる、キャリアグランドスラムを果たした。大目標にしていた大会で優勝して珍しく涙も見せる。

だが、その後は全仏オープンに調子のピークを持ってきすぎたこともあり、心身ともに疲弊したのか精彩を欠く。この間にアンディ・マレーが調子を上げ、これまでBIG4で第4の男扱いだった彼が、イギリス出身選手として現行のランキング制度では史上初の1位を獲得する。

2017年に入ってもジョコビッチの調子は上がらず、右ヒジ痛もあってシーズンの多くを欠場する苦しい1年になった。

長くBIG4が男子テニス界を支配してこられたのは、テニスの実力もさることながら大きな怪我をしない、長期離脱しないことが理由としてあげられる。しかし、この時期はBIG4それぞれが怪我による長期離脱、そしてそこからの復帰に苦しめられた。

2018年の全豪オープンでも4回戦で敗退したジョコビッチは、前年から苦しめられ続けてきた右ヒジにメスを入れる決断を下す。比較的短い離脱期間で復帰したジョコビッチだったが、なかなか本来のパフォーマンスが戻らない。

この時期は王朝復権を目指す元王者にとって、プレーのイメージと実際の身体の動きが合わない、もどかしい時間だった。

「正直に言うならば、私は手術後に高いレベルで復帰できると思っていました。しかし、実際には3ヶ月か4ヶ月かかりました」

手術から本来のプレーを取り戻すことが、こんなにも大変なものだとは思っていなかった。それでも、シーズンが進むに連れて本来の調子を取り戻し、ウィンブルドンで3年ぶり4度目の優勝トロフィーを抱くと、全米オープンでも準決勝で錦織圭を破り決勝に進出した。

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「(復帰までの時期に)私は自分自身と向き合い、その過程で忍耐強くなることを学びました。それは決して私の強い部分ではありませんでした」

そこで得たものとは

決勝ではデル・ポトロの強打を鉄壁の守備で防ぎ、9年ぶりの優勝を目指した相手をストレートで破って優勝した。

苦しい時期を乗り越えてのグランドスラム2冠に、ジョコビッチも感無量といった様子で話す。

「人生では、良い結果を得るためには時間がかかることが分かりました。実際にそれを作り上げたり、物事が起こったりするのには時間がかかります。この2ヶ月間は素晴らしいものでした」

2017年のジョコビッチはウィンブルドン後、ケガを理由にシーズンから離れているため、ここから先は守るべきポイントがない。世界ランキング1位復帰が見えてきた。

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再び元のレベルに戻ったのかとファンは期待するが、ジョコビッチ自身は「自分は新しいレベルに達したと思うので、過去のことは考えたくない」と言う。

「それは私の思考のアプローチのようなものです。私はいまこの瞬間から、自分が出せる最大限の力を、あらゆる場面で発揮したいと考えています」

決勝戦のあとにはデル・ポトロを称える

怪我から見事なカムバックを果たし、2017年の全豪オープンを制したあと、ロジャー・フェデラーはスピーチで決勝を争ったライバル、ラファエル・ナダルを称えた。

この年はナダルも数年間苦しめられた怪我からの復活を果たし、再びテニス界にフェデラーとナダルの2強が戻ってきた年だった。

決勝でナダルを破ったフェデラーは、もしテニスに引き分けがあるなら、今夜はそれでもいいと思ったとナダルの健闘を称えた。

「テニスは過酷なスポーツです。引き分けはありません。もし引き分けがあったなら、ラファと分かち合っても良いと思いました」

それと同じように、ジョコビッチは右ヒジの手術から復帰した経験を踏まえ、選手生命の危機とされた手首の怪我から復活し、全米オープン決勝に戻ってきたデル・ポトロを称えた。

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「デル・ポトロを祝福させてください。彼は手首を痛めてもここまでカムバックしてきた。自分を信じる力のおかげです。今夜は残念な結果に終わりましたが、いつかここに戻ってきてトロフィーを獲得するでしょう」

怪我からのカムバックを経験したことで、デル・ポトロの苦労も分かったと話すジョコビッチは、今回の回り道で一回り成長したようだ。